「As The Time Flies」



 1978年にリリースされたフランク・ウェーバーの記念すべきデビューアルバムであり、AOR史に名を残す大傑作アルバム。収録された9曲には、ミディアムやスローナンバー、爽やかなポップス調にジャズタッチ、そしてバラードまで含まれ、全てが珠玉の名曲である。バックミュージシャンには、リチャード・ティーやウィル・リー、アンソニー・ジャクソン、スティーヴ・ガット、ジョン・トロペイ、デヴィッド・スピノサ、マイク・マイニエリなどのジャズやフュージョン界で当時活躍していた腕利きのミュージシャンばかりを起用し、更にはバックボーカルにデヴィッド・ラズリー、ルーサー・ヴァンドロス、アーノルド・マッカラーなどの豪華なメンバーを迎えた、まさに力作である。

 オープニングを飾る1曲目の「'71」は間違いなく、このアルバムのハイライト的な楽曲であり、最もAOR的な要素を含んだ名作であろう。1971年の若い頃に思いを馳せながら今の自分に戸惑いを感じる様子が良く表れている。また「REGINA」や「SO MANY SIDES」のような恋人を思いながら歌い上げるバラードは、優しさと切なさが伝わる秀作である。更には、ニューヨークの雰囲気を持つ都会的なサウンドが印象的な「AS  THE TIME FLIES」「COMPLICATED TIMES」やジャズ的要素をベースにした「STRAIGHT UP AND FLY RIGHT」、そして彼の繊細さを窺わせる「I KNOW, YOU KNOW」「PARENTS」「SHINING IN YOU」のような抒情的な表現は彼の魅力であり、こうした彼の音楽的な幅の広さには驚かされるとともに必ず全てのリスナーを虜にすることであろう。

 聴き込むほどにそれぞれの楽曲の良さがより味わい深くなる名盤アルバムである。 (Night Plane)


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